【光と影】底辺まで落ちぶれたマレーが這い上がれた理由とは?

 

アンディ・マレーが、股関節の怪我を理由に引退を宣言したあの時から、はや3年が経とうとしている。しかし、そんな彼は、全豪オープンの前哨戦である先週に開催されたATP250シドニーで、見事準優勝を飾った。マレーの不屈のモチベーションは、一体どのような方法で湧き上がっているのだろうか?tennis.comが報じている。

【関連記事】マレーを引退寸前まで追い込んだ股関節の怪我はナイフで刺されるような痛みらしい。

マレーの目標はトップ100ではなくトップ10

 
 
 
 
 
この投稿をInstagramで見る
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

Andy Murray(@andymurray)がシェアした投稿

マレーの試合は、私たちに多大なインスピレーションを与えてくれる。

もしかしたら、今のマレーのプレーに不満を感じているファンもいるかもしれない。確かに今の彼は、かつてのレベルよりも、サイドラインからサイドラインへとダッシュするスピードが落ち、フォアハンド側で攻められた時にも、カウンターではなく守備的なスライスを多用せざるを得ない。事実として、昔のようなアグレッシブなマレーのプレーは、もう見ることができないのだ。

しかし、彼はこれまでのキャリアでこなしてきた905試合の中で、何回も繰り返しアップデートを繰り返してきた。さながら彼をiPhoneに例えるならば、今はバージョン10.0ぐらいだろう。そんなマレーの試合を見ると、ファンとしては勇気が貰える。

マレーが最後に世界王者になってから4年半が経ち、古くからのライバルであるノバク・ジョコビッチは、いくつものグランドスラムタイトルを積み重ねていたが、その反面、マレーはメッツ、アントワープ、ウィンストン・セーラム、レンヌといった決して花形とは言えないトーナメントを主戦場としてきた。

これはマレーにとっても、彼のファンにとっても、もしかしたら屈辱的なことだったかもしれないが、マレーは文句一つ言わずに、着実にランキングを上げ続け、昨シーズンは134位までカムバックすることに成功した。マレーは持ち前のハングリー精神について、以下のように語ったことがある。

「今の自分の目標は、トップ100に入ることじゃない。トップ10に入ることだ。その方が、目標としてモチベーションが上がる。トーナメントに勝ち、ランキングの上位に入ることが、私の最高のモチベーションになるんだ」

マレーは最強のロールモデル

時としてマレーは「下位ツアーを回る選手の数少ないチャンスであるワイルドカードを、彼が横取りしているのでは?」と批判されることもあったが、彼がファンから求められている存在である限り、この批判は的外れだ。

テニスもビジネスだ。3度のグランドスラム・チャンピオンであり、2度のオリンピック金メダリストであるマレーは、ファンがお金を払ってでも見たいと思う選手の1人。そんなテニスのカルチャーという部分でも活躍してきたマレーは、ワイルドカードを受け取るにふさわしい人物と言える。

加えてマレーは、時々口から出てしまうコート上での暴言を除けば、テニス選手として価値のあるロールモデルだ。マレーは男子と比べれば不人気である女子テニスの魅力を推進していることでも知られ、彼自身も女性のコーチを雇っている。これは、スポーツ界すべての若い選手へ送るべき、マレーのジェンダー差別を無くすためのメッセージであり、彼の持つ素晴らしい世界観を表している。

イギリス人らしいジョークを飛ばしたかと思えば、職人気質なテニス論を語り出すなど、その豊かな人間性で多大な人気を獲得しているマレー。彼が今シーズンの序盤から絶好調な姿を見ることができて、世界中のファンは大喜びのはずだ。今後も怪我には気を付けてもらい、1年でも長く現役を続けてもらいたい。

(画像=andymurray)