【強すぎ】クレーコートで最多勝を記録したプロテニス選手は?【2021年シーズン版】

 

テニスは他のスポーツにはない魅力的な部分がいくつも存在する。その内の1つが「サーフェスの違い」だ。季節によってプレーするサーフェスが変わるこのスポーツは、選手の得意不得意も相まって勝敗の予測意欲を強く掻き立てる。また、選手の育った環境によって、それぞれのサーフェスの勝率が変化してくるのも面白い観点だ。

 

そしてその中でも、ツアーを回る際に最も重視されるサーフェスはクレーコートだろう。もちろんハードコートのトーナメントがツアーの大部分を占めているのは事実だが、クレーコートは苦手な選手が多く、春先のシーズンにポイントを稼げるか稼げないかで年末のランキングに大きな変化が起こる事は珍しくない。そこで今回は来シーズンへの予習も兼ねて、2021年のクレーコートシーズンで顕著な結果を残した選手達を紹介させていただきたい。

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クレーコートでの勝利数ランキング

 
 
 
 
 
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では最初は、一番目立つスタッツから見ていく事としよう。2021年シーズンのクレーコート勝利数ランキングのトップ5は以下の通りだ。

 

クレーコートの勝利数ランキング
キャスパー・ルード:28勝
ステファノス・チチパス :23勝
フェデリコ・デルボニス:23勝
ラファエル・ナダル:19勝
アルバート・ラモス=ヴィノラス:19勝

 

赤土の王者であるナダルは、ローラン・ギャロスでジョコビッチに敗北したこともあり、今年のクレーコートシーズンでの影は例年よりも薄かった。しかしそれでも、ランキングの4位にいるのは立派だと言えるだろう。それと反してブレイクアップしたのは、見事1位を獲得したキャスパー・ルードだ。彼は今シーズンに芝のコートでもタイトルを獲得しており、ツアーを代表するマルチサーフェスな選手となりつつある。粘り強いストロークを持つ彼はクレーとの相性が抜群で、来シーズンも間違いなくランキンングの上位に食い込むだろう。

 

また、それに次いでチチパス がランキングに入っていることも興味深い。何故なら本来、彼のような片手バックの選手は、ボールが跳ねやすいクレーコートとは相性が悪いからだ。過去にナダルがフェデラーに散々やって見せたように、力の入らない高い打点でショットを打たされることになるが関の山だ。しかし、それでもチチパス がクレーコートを苦にしないのは、高い打点から放つスライスが優れているからだろう。彼は今シーズン、コーチであるムラトグルーと共にスライスの強化に取り組んでいる姿が目撃されており、その結果はクレーでの勝利数に如実に現れている。

クレーコートで獲得したポイント数ランキング

 
 
 
 
 
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次は、クレーコートのトーナメントで獲得したポイント数のランキングだ。

 

クレーコートで獲得したポイント数ランキング
ノバク・ジョコビッチ:3530
ステファノス・チチパス :3505
ラファエル・ナダル:2860
キャスパー・ルード:2480
アレクサンダー・ズベレフ:2170

 

ローラン・ギャロスのファイナリストであるジョコビッチとチチパスが僅差で並んでいるのは想像通りと言えるが、5位にズベレフが入ったことは強く彼を称賛するべきだろう。彼は今年のアカプルコとマドリードでタイトルを獲得し、クレーでもトップクラスの戦いができることを証明した。特にマドリードでは、あのラファエル・ナダルを倒していることもあり、来シーズンの彼のクレーコートでの活躍も間違いなく注目に値する。

獲得ポイント内訳のクレー比率ランキング

 
 
 
 
 
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最後は、今シーズンに獲得したポイントの中で、最もクレーコートのポイントの比率が高い選手達のランキングを見てみよう。

 

獲得ポイント内訳のクレー比率ランキング
フアン・マニュエル・セルンドロ:100%
フェデリコ・コリア:97.95%
セバスチャン・バエズ:96.59%
フェデリコ・デルボニス:94,88%
ファクンド・バニース:89,53%

 

このランキングで特段に目を引くのは、セルンドロの100%という圧巻の数字だろう。彼は2月に行われたコルドバOPで、自身初めてのATP本戦であるにも関わらず優勝してしまった。初本戦でのタイトル獲得は2004年のサンティアゴ・ベンチュラ以来の記録であり、テニス界を大いに沸かせた彼のキャリアのハイライトだ。セルンドロは、ツアースケジュールをクレーコート重視で組んでおり、今シーズンのネクストジェンファイナルの3戦以外は、全てクレーコートのトーナメントへ出場している。彼は今後もウェアを土まみれにしながら、キャリアを通してクレーのスペシャリストとして成長していくことだろう。

クレーのスタッツは選手のポテンシャルを測る物差し

 

クレーコートが苦手な選手はツアーの中でもかなり多いが、それには理由があり、それはハードコートに比べると足元が滑りやすいことに加え、イレギュラーバウンドが増えるからだ。

 

足元が滑りやすいと、ベースラインを左右に走らされた時に踏ん張ることができない。そこでクレーコートのプレーでは、上手くスライディングする技術が重要になってくるのだが、ハードコートで育ってきた選手にとっては順応するのが難しく、苦手意識が植え付けられてしまう。これは余談だが、2012年のマドリードOPが採用したブルークレーコートがたった1年で撤廃されてしまった原因も、あまりに滑り過ぎると選手達のクレームが多発したからだと言われている。

 

また、繊細なタッチが要求されるフラット系のボールを打つタイプの選手は、クレーコートを嫌う傾向にある。最も顕著な例はダニーロ・メドベデフだろう。彼がクレーコートで早期敗退を繰り返していることは有名な話だが、メドベデフにクレーコートで勝利したことのあるラヨビッチは「メドベデフは、クレー上では少し急いでいるような印象を受ける。クレーはボールが跳ねてからスピン、スライスなどの変化が頻繁に変わるから、それが彼のスタイルに合わないんだよ」と分析していた。つまり、メドベデフのようなフラッターには、クレーで頻繁に起こるイレギュラーバウンドは致命的なデメリットなのだ。

 

テニス選手として、あらゆる順応力が必要とされるクレーコートでのプレーを表したスタッツは、選手達の本来のポテンシャルを推し測る物差しと言えるだろう。今回は2021年シーズン限定でスタッツを振り返ったが、調べる範囲を広げることでさらなる知見が手に入るかもしれない。来シーズンのクレートーナメントが早くも楽しみだ。

 

(画像=casperruud)