ペン・シューアイ事件で中国から撤退したWTAが次に見つめる市場とは?【日本も候補地】

 

ペン・シューアイ事件による制裁として、中国からトーナメントを撤退すると判断したWTAツアーは、これで巨大マーケットを逃してしまい、ツアーの規模が小さくなってしまうことが危惧されている。同団体は、どのような対策を実行するのだろうか?tennis.comが報じた。

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シューアイ事件でWTAのロードマップは崩れた

2009年に発表された「WTAロードマップ」は、ツアーのスケジュールと構造に大きな改革をもたらした。これまでの女子テニスのカレンダーを刷新したことに加えて、まだ当時、未開拓で大きな市場を抱えていた中国への進出の一歩目として評価されたのだ。

それから約10年間、WTAの中国への投資はさらに拡大した。これは、地元選手の李娜がグランドスラムタイトルを獲得したことで、中国内におけるテニスへの関心が高まったことも大きな要因だろう。

コロナでシーズンが中断する前の2019年に、中国で開催されたトーナメントは、合計して9大会にものぼる。「WTAファイナルズ」が記録的な契約金額で深圳に移転したことも含め、同団体は順調にビッグマーケットである中国へ、テニスというスポーツを広める役割を全うしていたと言える。

しかし、WTAのCEOであるスティーブ・サイモンが、中国政府の元高官から性的暴行を受けたと告発したペン・シューアイの安全性を懸念して、中国でのすべてのトーナメントを停止すると発表した。これで、世界で最も人口の多い国との関係を疑問視する組織が、テニス界に限らずあらゆるスポーツ界で増加した。

スケジュールの5分の1が宙に浮いた状態で、女子テニスはこれからどうなっていくのだろうか?

おそらくWTAは、空いたスケジュールを違う市場で補填しようとするだろう。これまでも、WTAファイナルズをメキシコに移したり、単年度ライセンスでアメリカやヨーロッパ各地で小規模なトーナメントを追加してきたことから分かる通り、この点にあたっては同団体の得意分野なので、問題なく開催できるはず。

では、カレンダーに空きができたことで、盛り上がりを見せる可能性のある地域は、一体どこなのだろうか?具体的な候補地はラテンアメリカ、中東、東南アジアの3つだ。

1:ラテンアメリカ

 
 
 
 
 
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WTAトーナメントが、大きな市場を持つ中国に移動するにつれて、ラテンアメリカでのイベントは徐々に減ってきていた。2019年シーズンには、メキシコのアカプルコとモンテレイ、加えてコロンビアのボゴタの3大会のみとなってしまい、盛り上がりが欠けていた感は否めない。

しかし、同地域にテニス人気がないかと言えば、それは嘘だ。2019年に、ロジャー・フェデラーとアレクサンダー・ズベレフは、チリのサンティアゴ、アルゼンチンのブエノスアイレス、ボゴタ、メキシコシティ、エクアドルのキトの5都市を回る中南米エキシビションツアーで、大規模なスタジアムを常に満員にしていた。この地域のテニスに対する情熱はとても熱い。

事実ATPツアーには、シーズン前半にアルゼンチン、チリ、ブラジルで開催されるクレーコートの「ゴールデン・スイング」と呼ばれる期間が存在している。これはWTAが実現したい青写真だろう。ちなみにWTAは今シーズン、WTAファイナルズをメキシコのグアダラハラで開催し、大成功を収めた。

2:中東

 
 
 
 
 
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中東で最も有名なトーナメントはドバイだろう。このドバイは、2005年に男女の賞金総額の同額化を実現し、ツアーレベルの大会としては史上初の偉業を成し遂げた素晴らしいイベントでもある。

また他にも、カタールのドーハでもトーナメントが開催されており、毎年、WTA1000500レベルの大会が交互に開催されている。アブダビ(アラブ首長国連邦)が昨シーズンに、500レベルの大会としてWTAカレンダーにデビューしたことも忘れてはいけない。このように、WTAが中東に力を入れ始めた背景には、アラブ人で初めて世界ランキングトップ10に入ったオンス・ジャブールの台頭もあるはずだ。

3:東南アジア

 
 
 
 
 
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カレンダーから中国を除外しても、アジア全域が除外されるわけではない。特に日本では、1979年からツアー大会が開催されており、テニス全体の歴史は長い。

加えて東南アジアでは、シンガポールでWTAファイナルズが開催されてから、それを皮切りに、香港、東京、ソウル、と市場は順調に拡大されており、今ではタイ、マレーシア、台湾でも大会が開催される。

そして、最も見落とされているのは、13億人以上の人口を抱えるインドだろう。現在インドで開催されるプロテニスイベントは、プネで開催されるATPのタタ・オープン・マハラシュトラのみだ。WTAが最後にインドをカレンダーに掲載したのは2008年、セレナ・ウィリアムズがバンガロールでトロフィーを掲げた時だ。今後、中国の人口を超えると噂されているインドへ、今の内から種を撒いておくのは、今後のテニス界の繁栄にとっても必須だ。

(画像=naomiosaka)