【海外テニス】故ボロテリー氏が錦織に抱いた第一印象とは?「彼は英語をほとんど話せなかった」

 

2022年の12月に亡くなってしまったIMGアカデミー創設者のニック・ボロテリー氏。10人の世界王者を指導した経験のある彼は、日本の至宝である錦織圭をジュニア時代からサポートしていたことでも知られている。そこで今回は、海外テニスメディアBASELINEが掲載したボロテリー氏がかつて執筆したコラムを元に、彼が錦織に抱いた第一印象や、明瞭なプレー分析について迫って行こうと思う。

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ボロテリー氏が抱いた錦織の第一印象

錦織圭の物語は、希望に満ち溢れた少年が、夢をいくつも叶えていくというフィクションを読んでいるような感覚になる。

圭がテニスを始めたのは5歳の時。彼を見たらすぐに天性の才能があると分かった。2004年、13歳か14歳の時、圭は盛田正明テニスファンドのサポートを受けて、IMGアカデミー・ボロテリー・テニス・プログラムに参加する4人のうちの1人に選ばれた。

圭がアメリカに到着したばかりの頃、彼は英語をほとんど話せなかったが、トッププレーヤーになるための意欲と才能を持っていることは明らかだった。彼は電光石火の速さを持ち、恐れを知らず、チャンピオンのような存在感を持っていた。

アカデミーでは、学業だけでなく、一流のテニスコーチ、フィジカルコンディショニングやメンタルコンディショニングの専門家、栄養士、マネージャーなどのサポートを受けながら、圭は成長していった。

彼はITFのジュニアサーキットに出場し、16歳で世界ジュニアランキングのトップ20にランクされた。その1年後にはATPランキングのトップ300に入った。2008年のUSオープンでは、ベスト16に進出し、当時世界ランキング4位だったダビド・フェレールを破り、再びその潜在能力を見せつけた。

ボロテリー氏のコーチング流儀

60年間のコーチ人生を通じて、私はほとんど全てのタイプの生徒を教えてきた。正しいコーチングは一人一人違うし、私のアプローチも人によって変わってくる。例えば、モニカ・セレシュ(元世界女王)は、ストロークが両手両打ちのとても異端な選手だった。彼女は、決して才能のある選手ではなかったが、すべてのボールを処理できた。それに、毎日何時間も努力することを厭わなかった。

アンドレ・アガシは、ほとんどすべてのボールを見て、非常に素早く反応する能力を持っていた。彼は個性的だったから、頭ごなしに指示するのではなく、彼のことを理解し、耳を傾けることが必須だった。ジム・クーリエは、技術的な弱点(バックハンド)を、自分の強み(フォアハンド、サーブ)でカバーする、そんな身体能力の高いアスリートだった。

マリア・シャラポワは、ベースラインからフォアハンドもバックハンドも可能な限りフラットに打つ。彼女は非常に競争力があった。ビーナス・ウィリアムズは、より古典的な動きとストロークを持っていて、見ていて美しい。セリーナは非常に身体能力の高い選手で、相手を打ち負かす術しか知らない。みんなそれぞれ違うんだ。彼らへ効果的に教え、やる気を起こさせるためには、それぞれ異なる方法でコミュニケーションをとる必要がある。

ボロテリー氏の錦織のプレー分析

圭の最大の武器は、足の速さ、スイングの速さ、そして相手コートの隙間を見つけて作り出すショットクリエイト能力だ。類まれなクイックネスから、ツアー屈指のリターンも展開できる。ノバク・ジョコビッチを除けば、アンドレ・アガシ以来、これほど優れたリターンをする選手は見たことがないと思う。

ストロークも優秀だ。フォアハンド、バックハンドともに非常に早いタイミングでボールを取ることができ、左右どちらからでもバランスよくコートにボールを送り込むことができる。また、手首が器用だからディフェンスもうまい。

以前はサーブ、特にセカンドサーブに難があった。しかし、ダンテ・ボッティーニ(元錦織のコーチ)の指導のもと、ファーストサーブの威力がアップした。今ではファーストサーブでフリーポイントを取れるようになったね。セカンドサーブも大幅に改善されたから、非常に良い守備ができるようになった。また、ケガへの耐久性も改善すべきポイントだったが、フィジカルトレーナーやコンディショニングプログラムの助けを借りて、この分野も改善されている。

テニス選手として一流になるためには、メンタルと強い願望、そして目標達成のために大きな犠牲を払う意志が必要だと私は考えている。圭にこれらを与えてくれたのが、コーチであるマイケル・チャンだ。チャンは、圭に戦い方と相手をすり減らす方法、より高いレベルのプレーを教えている。圭には強力なチームがあり、最高レベルで成功するために十分な体制が整っている。

もし彼が健康を維持し、成長し続けることができれば、今後もATPランキングトップ5を維持し、ビッグタイトルを争うチャンスがあるだろう。彼には才能があり、欲望があり、サポートチームもある。どんな展開になるのか、楽しみだ。

(画像=https://www.instagram.com/keinishikori/)