【ATP/テニス】ピート・サンプラスはデビスカップデビュー戦でイップスになっていた?フランス戦での裏話を回顧。

 

現在、熱い盛り上がりを見せているデビスカップ。同大会は数あるテニストーナメントの中でも、100年以上の歴史を持つ格式高い大会であり、幾度となく名勝負を生み出してきた。そして、それはアメリカのレジェンドであるピート・サンプラスも例外ではない。彼はデビスカップでアメリカを2回優勝に導いており、当時のサンプラスは国のスーパーヒーローだった。しかしそんな彼でも、デビスカップのデビュー戦ではかなり緊張をしたそうだ。海外テニスサイトtennis.comが報じている。

 

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元々、サンプラスにとってデビスカップは、重要なトーナメントではなかった。何故なら、デビスカップが行われる11月といえば、アメリカの4大スポーツである内のバスケットボール、アメフト、アイスホッケーがシーズン中であり、テニスの位置付けはどうしても低くなってしまうからだ。サンプラスも「子供の頃、デビスカップには全く興味はなかった。だってテレビで見た記憶がなかったからね。」と語っている。しかしサンプラスは、デビュー戦の前に、ヨーロッパにおけるデビスカップの重要性というものを、しっかりと理解しておくべきだった。

 

普通であれば、デビスカップに初めて出場する選手は、本来テニスには存在しないホームとアウェイの空気感に慣れるために、ダブルスでデビューすることが多い。あのジョン・マッケンローですら、デビュー戦はダブルスだった。しかし、サンプラスはいきなり決勝リーグのシングルスに抜擢された。当時の彼の活躍を考えれば、これは当然のようにも思えるが「アウェイのフランスに着くと、不安とストレスが襲いかかってきた。」と彼自身が語るように、サンプラスにとってこれは強いプレッシャーとなった。

 

ローランギャロスを見れば一目瞭然だが、対戦相手のフランスにおいて、テニスはとてもメジャーで人気なスポーツだ。特にこの時期のフランスは、ヤニック・ノアを筆頭に非常に人気と実力のある選手が揃っていた時期であり、試合会場は国の優勝を期待した観客で埋め尽くされた。サンプラスは当時を「野次馬根性丸出しのフランスのファンの前でプレーするのは、ギャンブルみたいなものだったよ」と振り返っている。

 

そんな彼の対戦相手は、怪我からの復帰を目指すアンリ・ルコントだった。ルコントは当時、世界ランキングを大きく落としていたが、元全仏のファイナリストであり、楽に勝つことはできないとサンプラスも警戒していた。いや、警戒しすぎてしまった。

 

「あの時の僕に何が起こったかというと、緊張で体がカチコチに固まってしまったんだ。コンディションは最悪だった。産まれたての子鹿みたいな麻痺状態だよ。若かったあの頃の自分は、デビスカップでプレーすることに全く対応できていなかったね。代表戦に自分は適していないとも思ったよ。」

 

結果的にルコントとの試合内容は4-6,5-7,4-6のストレート負け。そこに本来のサンプラスの姿はなかった。サンプラスほどの選手でも、緊張してイップスになってしまうのは驚きだが、この後の彼はしっかりとデビスカップの歴史に残るような活躍を残す。特にこの3年後に行われるロシア戦では、シングルスで2勝、ダブルスでも勝利したことで、ほぼ1人で勝敗を決してしまうというモンスターパフォーマンスをしている。

 

最近はテニス界のご意見番として、重要な役割を果たしているサンプラス。彼が「ジョコビッチが史上最高の選手だと疑わない」と発言した際には、テニス界で大きな話題を呼んだ。彼はこれからも持ち得た経験とその影響力で、テニスというスポーツを正しい方向へと導いてくれるだろう。特にアメリカの新鋭であるコルダやティアフォーには、ぜひサンプラスのDNAを引き継いでもらいたい。

 

(画像=@officialpetesampras)