アメリカのテニス界を背負う男フリッツ【インディアンウェルズ優勝】

 

かつて、世界最高のジュニアの一人として数えられていたテイラー・フリッツは、インディアンウェルズを優勝したことで、地元アメリカの期待を背負える器があることを証明した。今回は、そんなフリッツの活躍を振り返っていきたい。puntodebreakが報じている。

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フリッツのマスターズ制覇はまぐれ?

多くの人にとって、フリッツが2022年のインディアンウェルズで優勝することは想像もつかなかった出来事のはずだ。しかし、近年のマスターズを振り返ってみると、フベルト・フルカチュや、キャメロン・ノリーといったニューフェイスが、トロフィーを掲げていることからも分かる通り、誰が優勝してもおかしくない新時代の到来が近い。

しかし、中には、いくつかの激闘を経て、フィジカルに問題を負っていたラファエル・ナダルと対戦し、ハイエナのように優勝したフリッツのことを良く思わないファンがいることも事実だろう。しかし、それは妄想と言える。コーチとして元ATP選手のマイケル・ラッセルを招聘し、ロジャー・フェデラーや、ピート・サンプラスといったレジェンドを指導した過去を持つポール・アナコーンと取り組んできた血の滲むようなフォアハンドの強化が、やっとインディアンウェルズで身を結んだ。つまり、フリッツの勝利は価値のあるものなのだ。

フリッツの生い立ち

 
 
 
 
 
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フリッツは、アスリート一家で育った。彼の母親は元プロテニス選手のキャシー・メイであり、世界ランキングトップ10入りも果たした名選手だ。それに加え、家から車で2時間ほどの距離にインディアンウェルズテニスガーデンがある環境で幼少期を過ごせば、テニスへの憧れが強くなるのは当たり前だ。

ジュニアの頃からフリッツは、大型新人として期待されてきた。大柄で、ウィングスパンがある恵まれたフィジカルは、豪快なフォアハンドとビッグサーブでゲームメイクする、オールドスクールなアメリカ人プレイヤーになれるはずだと見込まれていたのだ。しかし、蓋を開けてみると、彼のスタイルは周りの期待とはかけ離れていた。得意としたショットはフォアハンドではなく、バックハンドのアングルショットであり、フィジカルを最大限に活かせているとは言えないプレーをしていた。

加えて、フリッツは若くしてプライベート面に問題を抱えていた。18歳の時に同じテニス選手でもあったラクエル・ペドラサと結婚し、その1年後、長男のジョーダンくんを授かった。しかしフリッツは、22歳の時にペドラサと離婚。精神面において、100%テニスに集中できる環境とは言えなかった。

フリッツのプレーの成長

 
 
 
 
 
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フリッツが、世界ランクトップ15レベルの選手に成長するまでの道のりは、決して簡単なものではなかった。彼は大舞台で崩れやすく、2021年の全豪オープンでは、負傷しているノバク・ジョコビッチに対して惨敗し、昨年のインディアンウェルズでは、準決勝でニコロズ・バシラシビリに敗れ、地元ファンの期待を失った。

では、今年のフリッツは何故優勝出来のだろうか?それは精神面での成長が原因だ。アナコーンを始めとした、勝ち方を知る人たちをチームに置き、長い間、勝者のメンタルを磨いてきたのだ。

技術的な面に話を移すと、かつてのフリッツのプレーを知る人は、彼の横方向の機動力が上がっていることに驚きを隠せないはずだ。以前は、バックラインを支配する敏捷性はなく、不器用にステップしていた。しかし、彼のスピードと協調性は非常に向上している。フリッツは大会後に以下のようにコメントしている。

「去年のこの大会から、フォアハンドがつながり、カチッと決まるようになった。今、自分はフォアを自由に解放し、信頼することができる。以前はよくミスをして、試合に負けていたショットなんだ。今は決定打になろうが信頼できるし、フリーポイントを獲得できるようになったという感じさ」

「ナダルを相手にして、コートの真ん中に短いボールを打つことは自殺行為だから、バックハンドで彼のフォアを封じ込め、ショートアングルを狙った。フォアハンドではネットに攻め込んでいった。そして、このすべては、コートの後方に沿ったポジショニングの改善によって、可能になったんだよ」

キャリア最大の勝利を手にしたフリッツは、トップ10になることを次のターゲットにしている。彼が今後どのような成長を遂げるか注目だ。

(画像=taylor_fritz)