サーブのバックスイングは、あなたのサーブスタイルを大きく左右する。速度を重視するのか、安定性やスピン量を重視するのか——いずれの場合も、「どのタイプのバックスイングを選ぶか」はとても重要な問いだ。
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プロのバックスイングに「正解」はない

本記事では、多くのトップサーバーが採用している3つの代表的なバックスイングタイプを徹底比較する。自分のリズムやスタイル、そしてフォーム全体のスムーズさに基づいて「どれを採用すべきか」を考えるヒントにしてほしい。
プロツアーを見ていると、まったく同じサーブのバックスイングをする選手はほとんどいない。サイズ・形・リズムがバラバラに見えるバックスイングも、**「バックスイング中に起きている鍵となる関節の動き」**に分解すると、実は大きく3つのタイプに整理できる。
- ワインドアップ型(振り子型)
- ディレイド型(遅らせ型)
- コンパクト型(短縮型)
それぞれを詳しく見ていこう。
① ワインドアップ型

代表選手:フェデラー、ワウリンカ、メドベージェフ
ワインドアップ型は、3つの中で最も大きなスイングになるタイプだ。トスを上げる手(リリースハンド)と打つ側の手(ヒッティングハンド)の両方を同時に下げ、そこから同時に持ち上げながらトロフィーポジションへ入っていく。
両腕を同時に持ち上げることでラケットの移動距離が長くなり、トロフィーポジションに向かう途中で自然と勢いが生まれやすい。スイングの助走距離を伸ばすことが、スイングスピード向上に直結するわけだ。
動作の詳細としては、「腕を前に上げる動き」「腕を後ろ側・横方向に引く動き」「肘を曲げる動き」の3つを組み合わせる。上腕が肩と同じくらいの高さに来たところで、それ以上は上げずに肘を曲げていく。腕が長い時間まっすぐに近い状態を保てることが、大きな勢いと長いスイング軌道を生み出す。
特にフェデラーのワインドアップはツアー選手の中でも最も長く大きい部類に入る。コンパクトなショートテークバックを採用していた頃のアルカラスと比較すると、その違いは一目瞭然だ。アルカラスが最初からすぐにラケットを上方向へ動かすのに対して、フェデラーはモーションの出だしで一度腕とラケットを下に落とし、地面へ真っ直ぐ指すように動かす。そこから手を後ろへ・上へと運び、大きな円を描くようにラケットを動かしていく。この「円を描く軌道」こそが長い助走距離となり、鋭いスイングスピードを生み出しているのだ。
② ディレイド型

代表選手:シナー、ジョコビッチ、キリオス
ATPツアーで最も一般的に見られるタイプがこのディレイド型だ。最初はワインドアップと同様に両腕を同時に下げるが、そこからトスの腕を先に持ち上げ、ラケットを持った腕を少し遅らせて後ろ側に残す動きになる。「打つ側の腕を遅らせる」ことから、ディレイド(遅らせた)バックスイングと呼ばれる。
ワインドアップとの大きな違いは、3つの動き(前に上げる・後ろに引く・肘を曲げる)を同時に行う点だ。横から見るとラケットの移動距離が短く見えるかもしれないが、後ろから見るとラケットがしっかりと体の背中側まで回り込んでいる。肩に十分なストレッチがかかることで、自然なプロネーションが生まれる仕組みだ。
このタイプの進化の好例がヤニック・シナーだ。以前の彼はボールトスの動きと右腕の動きの「ズレ」が大きく、スイングに入るまでにタイムラグが生じていた。バックスイングがワインドアップとディレイドの中間のような中途半端な形で、動きにぎこちなさが残っていたのだ。
しかし現在のシナーは、バックスイングをわずかにコンパクトにしてよりディレイド型に近づけ、右肘がトロフィーポジションに入るまでの距離を短縮した。その結果、トスからスイングへのタイムラグが小さくなり、打点の高さも2.85mから2.88mへと向上している。バックスイングは単にラケットを引くための動作ではなく、サーブ全体のリズムと爆発力を決定づける重要な要素なのだ。
③ コンパクト型

代表選手:ティアフォー、モンフィス、ロディック
コンパクト型は、これまでの2つと異なり、両腕を大きく下げるところからスタートしない。最初から高めの位置にセットし、その位置からそのままトロフィーポジションへ持ち上げていく。
注意点として、スタート位置が高いためトスを上げにくく、トスが不安定になりやすい・高さが低くなりやすいという傾向がある。ただ、バックスイング自体がコンパクトで速くタイミングを合わせやすいため、トスが少し低めでも問題になりにくい構造になっている。
スイングスピードを生み出すためには、加速に使えるスイング距離が短い分、肩をしっかりと後ろ側へ引き「ねじり戻す」動きが重要になる。
ロディックが249km/hのサーブを打てた理由
ロディックのフォームは、コンパクト型の中でも特に独特だった。最初から腕を高めにセットし、コンパクトなテイクバックで素早くトロフィーポジションへ入りながら、膝の沈み込みから立ち上がりまでの動きを一体化させていた。その結果、非常に速いテンポでモーションを完結させられ、相手が「どこへ・どの種類のサーブが来るか」を読みにくいサーブになっていた。
さらにトロフィーポジションの形自体も一般的なプロとは異なっていた。通常はラケットの先端が上を向き、手首が肘より上にくる形だが、ロディックは先端が斜め上を向き、手首と肘がほぼ同じ高さになる独特のポジションを作っていた。この形からラケットダウンへ入るには前腕をより大きく動かす必要があり、その分スイングの助走距離が伸びて大きな加速を得られる。肩関節への負担は大きいが、小さなバックスイングでも最大限の加速を引き出すために編み出された独自のフォームだと言える。
まとめ
| タイプ | 代表選手 | 特徴 | 向いている人 |
|---|---|---|---|
| ワインドアップ型 | フェデラー、メドベージェフ | 最大のスイング軌道・高いスイングスピード | パワー重視、時間に余裕のある場面で打ちたい人 |
| ディレイド型 | シナー、ジョコビッチ | ツアー最主流・バランス型 | 速さと安定を両立させたい人 |
| コンパクト型 | ロディック、ティアフォー | シンプル・高い再現性 | 安定性重視・速いモーションを好む人 |
どのタイプが「正解」というわけではない。自分のリズム感やサーブで重視したい要素(スピード・スピン・安定性)に照らし合わせながら、自分に最も合ったタイプを選んでほしい。









