先日アメリカでは、セレナ・ウィリアムズとヴィーナス・ウィリアムズの幼少期を描いた映画「キング・リチャード」が公開され、世界一の姉妹である彼女らが紡いできた様々なエピソードが話題となっている。今回は、その内の1つを紹介させていただきたい。
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当時14歳のヴィーナスと父親のリチャードは、あるトーナメントに参加する前夜に、NIKEのエージェントに声をかけられた。そのエージェントは、ヴィーナスの才能に惚れ込んだことから300万ドル(約3億4000万円)の契約を結びたいと申し出をしてきたのだ。しかしこの契約には、一度結んでしまえば内容の変更はできないという条件が突いており、安易に結んでしまえばより良いオファーが来た時に大損するような内容だったのだ。
より良いオファーを待つか?それとも今確実にスポンサーを付けておくか?ヴィーナスとリチャードが選んだのは前者だった。2人は考えた末に、まずは自分たちのテニスのレベルをアメリカ中に知らしめることが先だと判断したのだ。このことは、ヴィーナスを指導していたコーチが、もしヴィーナスがこの先負け続ければオファーはなくなってしまうと反対したが、リチャードは結局「彼女の10年間の努力の価値を、最初にきたオファーですぐに決めつけるのか?」とコーチや周りからの反論を抑え、NIKEの契約から手を引いてしまった。
しかし、結果的にこの判断は吉と出る。ヴィーナスはオファーを断ったその後、メキメキと実力を伸ばしていき、アメリカのテニス界において無視のできない存在へと成長していった。そして、とうとうReebokから5年1200万ドルというNIKEの4倍のスケールの契約オファーを受け取り、ヴィーナスはスポンサー契約を結んだ。当時、ヴィーナスの契約面を担当していた弁護士のケベン・デイビスによると、やはりリチャードの判断には疑いの目を向けていたそうだ。
「リチャードの言うことは、とてもよく考えられていているんだ。最初は彼がとてつもない大きなギャンブルを始めたと思っていたけど、最後には私たちが間違っていたと彼は証明して見せたよ」
長らく女子ツアーの人気を支えてきたヴィーナスも今年で41歳となった。近年は故障が多く、満足にツアーを回ることすら出来ていないが、プレーの質からすれば、まだまだランキング上位の選手と渡り合えるだけの実力は持ち合わせている。もしまたいつか、妹のセレナと組むダブルスが見られたら、ファンは歓喜するだろう。彼女がトーナメントに参加する時が楽しみだ。
(画像=@venuswilliams)