プロのテニスコーチの給料ってどれくらい?【現役のコーチが解説してくれた】

 

元プロテニス選手で、現在はアネット・コンタベイトのコーチを務めるドミトリー・トゥルスノフが、Vedomoti Sportのインタビューに応じ、プロのテニスコーチのリアルな金銭事情やスケジュール、さらには愛弟子のコンタベイトの状況について語った。

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プロのテニスコーチの給料っていくらなんですか?

 
 
 
 
 
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近年はSNSのおかげで、パトリック・ムラトグルー、リック・マッチ、トニー・ナダル、カルロス・モヤ、ギュンター・ブレスニクなどといった、著名なコーチ達の存在と我々テニスファンとの距離がとても近くなっている。もはや彼らは、現役の選手達と比べても変わらないほどの知名度を持っているわけだが、そんなプロテニスコーチ達は、一体どれくらいの給料で働いているのだろうか?トゥルスノフは以下のように答えた。

「こういうのって詳しくは明かせないんだけど、選手ごとにいろいろな違いがあると言えるね。コーチが週に1,000ドル(約10万円)稼ぐのはそんな珍しいことじゃないよ。中には7000ドル、8000ドルといった法外な金額を支払う選手も普通にいるし。それだけの金額を払える選手達は、信じられないほどの資産を持っているよ。それから、プレイヤーの成績が良かった場合には少しボーナスが貰えたりするのも事実だ。このボーナスも選手によって金額が異なるけど。自分は、あるコーチが大会賞金の30%を報酬として受け取っていたことを知っているよ。だけどもちろん、コーチをやってる全員がリッチってわけじゃなくて、給料なしでツアーに参加している人もいるし、トーナメントで得た賞金のほとんどを独占してしまう選手もいるね」

日本のテニスコーチの平均年収が300万円程と言われている中、週に10万円稼ぐのが珍しくないと衝撃のコメントをしたトゥルスノフ。テニスコーチとして潤沢な生活を送りたいと考えている人は、スクールに就職するのではなく、フリーランスとして海外へ羽ばたく必要があるようだ。

プロのテニスコーチってどれくらい休めるんですか?

 
 
 
 
 
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プロのテニスコーチに夢があることは理解できたが、正直なところプライベートはどうなっているのだろう?常に選手に帯同しているテニスコーチが、どれだけの休日を確保できているのか興味は尽きない。トゥルスノフ曰く、その部分はコーチによってかなり違ってくるようだ。

「すべてのトーナメントへ選手と一緒について行くからね。例えば、10日から16日までは大会に同行して、16日から20日までは休暇を取る、みたいな感じで休日を組み込みながら、カレンダー通りに仕事をするコーチもいる。でも、私の場合はそうではない。私は毎日、コンタベイトのために身を捧げているよ。もし、彼女の動きにスピード感がないと感じたら、フィジカルトレーナーに相談して、その面を改善するためのエクササイズを追加・変更したりするのが私の仕事だからね。自分の選手が何を改善する必要があるのかを知るためには、すべてのトレーニングセッションに立ち会う必要がある。私が最も重視しているのは効率だ。一人が一方的に漕いで、もう一人が他方的に漕ぐと、効率がゼロになり、問題が多発してしまうからね」

トゥルスノフは、本気でコンタベイトを世界女王にしようと、死ぬ気で努力しているのだろう。そうでなければ、毎日休まずに彼女の練習へ付き合うのは難しいはずだ。またトゥルスノフはこのインタビューで、日本のエースであり、WTA界を引っ張る存在である大阪なおみについても言及した。

「大阪はここ数年、搾取されることが多い。彼女は、自分に課せられた責任に対する準備ができていなかったように思える。大阪は、多くのことを公表する上で、非常に影響力のある人物として多くの人に認識されていた。彼女に必要だったのは、地球の裏側でスポンサーの仕事をするのではなく、トレーニングと休息だよ。敗北から立ち直っていないのに、写真撮影やスポンサーとの仕事があると大変に決まっている。彼女はローランギャロスでのインタビューを拒否したけど、メディアへの対応は選手の責任の一部だ。彼女は、ジャーナリストに心を開くのが難しいタイプの選手なんだろうね」

テニス市場は大きくなっていてコーチもリッチになれる時代

このトゥルスノフのインタビューを聞いて思い出したのは、メドベデフがかつて語っていたチームのための経済事情だ。彼はチームを維持するためにはかなりの金額が必要だと主張していたことがある。

「僕はグランドスラムで優勝した月に、一瞬で300万ドル稼ぐ事もできるよ。でも、トーナメントで早期敗退を繰り返すような月は5万ドルも稼げないのが普通だ。それなのに、チームを維持するためには固定費を払い続けなければいけない。トレーナー、フィジカルトレーナー、時には怪我に応じて医師や理学療法士も雇う必要が出てくる。さらに言うと、彼らには実力に応じたボーナスも支給しなければいけない。もちろん、お金を払うのが嫌ならチームを持たなければいい。でも、それだと試合で結果を出す事が不可能になるんだ」

世界2位である彼でも、チームを維持する固定費がキツいというのだから、チャレンジャーツアーに参加している選手達が満足なチームを持つのはとても不可能だろう。これはATPのCEOであるガウデンツィが「チャレンジャーツアーにかかる費用は、投資のようなものだ」と発言し炎上した件にも関わってくる問題で、テニスへの参入障壁の実態とも取れる。

とはいえ、コーチも十分にお金を稼げるぐらい市場が大きくなっていることを、テニス界は誇らしく思うべきだろう。今後は日本人選手だけじゃなく、ゲームチェンジしてしまうような日本人プロテニスコーチが出てくることを期待したい。

(画像=anett_kontaveit)
(金額は2021年12月28日時点のもの)