【全豪オープン】解説者にも失望されていたナダルが大逆転優勝した背景を深堀り。

 

今年の全豪オープン男子決勝が行われ、ラファエル・ナダルが2-6,6-7(5) ,6-4,6-4,7-5でメドベデフに勝利し、2009年以来2度目の同大会制覇となった。今回は、熱い戦いとなったこのゲームを振り返っていきたい。Tennis.comが報じている。

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ナダルのギアはいつまで経っても入らなかった

おそらく、試合を観戦していたほとんどのファンは、メドベデフが2セット先取した時、翌日の朝のネットニュースで”ナダル、またも全豪オープン制覇の夢破れる”という見出しを見ることになると確信していただろう。

第1セット、たったの3ゲームをこなした時点で、すでに汗だくになっていたナダルは、メドベデフとどう戦えばいいのか迷っているようだった。どこにショットを放っても、電光石火のフットワークで追いついてくるメドベデフに対して、どこからどう見てもナダルは攻めあぐねていた。ESPNの解説者であるパトリック・マッケンローはこの時に「ナダルは、この試合を勝つために、今までに見たことのないハードなプレーをする必要があると思います」と語っていたが、ナダルに持ち前の粘り強さは見られず、第1セットは呆気なく6-2で奪われることとなった。

続く第2セット、観客たちはナダルのギアが切り替わることを期待していたが、いざ幕を開けてみると、ナダルの優勝への道は、メドベデフの鉄壁のディフェンスを前に、確実に閉ざされ始めていた。浅いスライスで、深くポジションを取るメドベデフをネットに誘き出したり、ドロップショットとパッシングのコンビネーションを積極的に活用し、リズムを崩そうと奮闘したにも関わらず、これらのナダルの戦略は、メドベデフのスプリント力の前では無意味だった。

その後、タイブレークに突入した際には、この試合を解説していたもう一人のマッケンローであるジョンが「彼は多くのエネルギーをこの第2セットに費やした。とても重要なセットになるだろうね」と語っていたが、結果的にナダルはタイブレークで5-3とリードしたにも関わらず、そこから4連続でポイントを失いセットを落とした。

解説者もナダルの勝利は諦めていた

第3セットが始まった時のナダルには、第2セットを取りきれなかったショックが画面越しからも確認できた。2-3で迎えたサービスゲームで0-40となり、メドベデフに3つのブレイクポイントを献上した時に見せた彼の苦しそうな表情は、言葉に表せない。観客は悲しげな声を上げ、解説者のパトリックも「これで終わりですね」と諦めていた。

しかし、ロッド・レーバー・アリーナにいる人達の中で、ナダルだけは最後まで諦めていなかった。

泥臭くこのサービスゲームをキープすると、4-4で迎えた第9ゲームでナダルはブレイクに成功した。メドベデフからすれば、ナダルの甘く跳ねてくるエッグボールを叩きつけるために、バックサイドへ注意力を払いすぎたのが運の尽きだった。普段であれば、彼はクロスコートへウィナーを狙うのが基本形なのだが、この時に彼は、ナダルのカバー力を恐れて、ドロップショットを選択してしまった。ナダルがこのチャンスを逃すわけがない。彼は、フォアハンドでカウンターを鮮やかに決め、そのままこのセットを取り返した。この危機的状況から復活した時のことを、ナダルは以下のように振り返っている。

「あの瞬間、もちろん状況は危機的だった。でも、スポーツは予測できないものだよね?あの状況ではストレートで負けるのが普通なんだ。わからないよ。ここでは何度もチャンスがあったのに負けているし、時には少しアンラッキーなこともあった。だけど、最後まで自分を信じていたかったんだ。自分にチャンスを与えたかっただけさ」

ナダルの絶対に諦めない精神はテニスへの意欲が元

この試合で、圧倒的なストロークを披露していたメドベデフから、ナダルが逆転勝利をもぎ取ることができたのは、一重にサーブのおかげだ。

サーブは長らく、ナダルの弱点として知られてきたが、コーチにカルロス・モヤを迎えてからは、逆に武器となりつつある。セカンドサーブの平均スピードは、昨シーズンから12kmもスピードアップし(150km→162km)、その分ダブルフォルトも増えたが、第5セット6-530-0のカウントで、サービスエースを取り、プレッシャーの低い状態でトリプルチャンピオンシップポイントを迎えられたのは大きかった。

加えて、ビッグサーバーであるメドベデフの配給を読めたのも大きい。 試合を通して、ナダルは23本ものサービスエースを取られたが、要所のブレイクポイントで勝負強さを発揮し、7回ブレイク(7/22)に成功した。獲得したトータルゲームも、メドベデフの25ゲームに対して、27と上回った。

試合後の会見で、ナダルは満足げにトロフィーを抱えながら、以下のように答えていた。

「すべてを捧げられた日だったんじゃないかな?楽しかったよ。戦いを楽しんだ。感情も楽しんだ。最後にトロフィーを掲げられたことが、今日のすべてを意味していると思うよ」

並の選手では諦めてもおかしくない状況の中、ナダルを支えていたものは何だったのだろうか?

「ゲームへの愛情、情熱、前向きな姿勢、そしてテニスへの意欲。それがすべて。チームのみんなが毎日助けてくれる。それがすべてだ」

今回の優勝で、グランドスラムダービーはナダルが一歩リードすることとなった。圧巻の逆転劇から一夜明けてもなお、興奮は冷めないが、ナダルにはとりあえず、好ゲームを繰り広げてくれたことに対して、感謝の気持ちを伝えたい。

(画像=@rolandgarros