果たしてフェデラーは未だに史上最高の選手なのか?【ナダルとジョコに負け越している現実】

 

2000年代までは、ロジャー・フェデラーが、テニス界のGOATになることは当然のことのように思われていた。2003年のウィンブルドンで初めてグランドスラムを達成したフェデラーは、その後、ウィンブルドンと全米オープンの5連覇を含め、17のグランドスラムのうち、11大会で優勝を果たしている。

しかし、今となっては、ラファエル・ナダルとノバク・ジョコビッチの猛追によって、彼の偉大な記録も霞がかかってきているのも事実だ。そこで今回は、フェデラーが圧倒的なGOATとして君臨する可能性について語っていきたい。

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果たしてフェデラーは未だに史上最高の選手なのか?

 
 
 
 
 
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まずは、フェデラーの偉大なキャリアを振り返ってみよう。彼は、2003年のウィンブルドン初優勝を皮切りに、2010年までのグランドスラム27大会中、16大会で優勝している。加えて、2004年から2007年まで4年連続でATP世界ランキング1位を獲得し、2008年にはナダルや、ジョコビッチ、アンディ・マレーと言った若手達に苦しめられ、世界ランキング2位に転落したが、2009年に再びトップに返り咲いている。

加えて、2003年から2010年までの7年間で、フェデラーは585試合に勝ち、91回しか負けなかった(勝率はほぼ85%)。84回の決勝戦に進出し、そのうち62回を制し、グランドスラムダービーでは、レジェンドであるピート・サンプラスを追い抜き、当時のATPランキング237週連続首位の記録を樹立し、キャリア・グランドスラムまで達成した。つまり、フェデラーは2000年代に、テニス界の栄誉を全て受け取ったのだ。

しかし、誰もがGOATはフェデラーだと確信していた中、ラファエル・ナダルとノバク・ジョコビッチが行く手に塞がった。

フェデラーがGOAT論争で不利になっている理由

 
 
 
 
 
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フェデラー個人としてのキャリアは、間違いなく素晴らしい物で、GOATと呼ばれるにふさわしいが、彼のBIG3との対戦戦績の悪さは、GOAT論争をするにあたって悪い印象を与える。

フェデラーのナダルとの直接対決の成績は、16勝24敗と大きく負け越している。一方、ジョコビッチとの対戦成績も23勝27敗とリードを取られている。同じ時代に活躍した2人の偉大なライバルたちとの対戦成績がマイナスであることは、フェデラーのGOATの称号を揺るがす証拠ではないだろうか?

参考までに、フェデラーに抜かれる前に最もGOATに近かったプレーヤーのサンプラスは、当時のライバル達との直接対決で全て勝ち越している。内訳を見てみると、アンドレ・アガシ(GS8回優勝)、ボリス・ベッカー(GS6回優勝)、ステファン・エドバーグ(GS6回優勝)が含まれる。言い換えれば、彼は間違いなくその時代を支配していた。

もう少し時計の針を巻き戻してみると、グランドスラムで11回優勝しているビヨン・ボルグも同様で、ジミー・コナーズ(GS8回優勝)やイワン・レンドル(GS8回優勝)といった同世代のライバル選手との直接対決で、プラスの成績を残している。

要するに、H2H記録(対戦成績)は、選手を評価する一つの指標にしかすぎないが、それを無視することは難しい。いくら偉大な記録を持っていても、純粋にプレーヤーとして強くなければ、GOATの称号は相応しくないからだ。

未だにフェデラーがGOAT候補に挙げられる理由

 
 
 
 
 
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では、未だにGOAT論争にフェデラーが加わっている理由は何だろうか?それは、個人的なカリスマ性だろう。

フェデラーが、ナダルやショコビッチと比べて、選手としての純粋な強さが劣っているとは言え、彼にはこの2人にはない華がある。言語化することは難しいが、滅多にラケットを壊さない紳士的な態度、テニス選手の完成形とも言える前へプレッシャーをかけていくプレースタイル、怪我にもめげずに復活する不屈さ…。これらはフェデラー特有の魅力であり、広い層のテニスファンを虜にしている。

あとは、フェデラーの、ナダルとジョコビッチに対するH2H成績が劣っているとは言え、フェデラーの全盛期が、この2人と少しずれていることは理解するべきだ。フェデラーにとって、最も瞬間風速が強かった2004~2007年までのシーズンでは、ジェームズ・ブレイク、マラット・サフィン、アンディ・ロディック、ダビド・ナルバンディアン、レイトン・ヒューイットといったライバル達を全く寄せ付けず、年間勝率90%超えを3度も達成している。全盛期のフェデラーに、ナダルとジョコビッチが挑んだとして、勝てるかどうかは論争に入れるべき要素の1つだ。

また、フェデラーには、ナダルとジョコビッチに追い抜かれていない記録がまだ存在する。それは、複数回のグランドスラム優勝シーズンの回数だ。

フェデラーは過去に、11年間でグランドスラムを20回し、7回複数のスラムを制覇したシーズンを送っている。対するナダルは、15年間で21回のグランドスラムを制覇しているが、複数のグランドスラムを制覇したシーズンは5回。一方、ジョコビッチは、11年間で20回のグランドスラムを達成し、複数のグランドスラムを制覇したシーズンは6回だ。

嬉しいことに、フェデラーはキャリアを脅かす膝の怪我を負ってもなお、まだラケットを手放していない。もしかしたら、ナダルやジョコビッチを次々と倒していく未来もあるかもしれない。彼のことをGOATと呼ぶ声は年々少なくなっていくことが予想されるが、この論争の決着は、彼が引退した時にハッキリとつけられるだろう。

(画像=rogerfederer)