ラファエル・ナダルは、全豪オープン準々決勝のデニス・シャポバロフ戦で、自身のATPツアー公式戦の最多記録となる11回のダブルフォルトを犯した。しかし、これは決して悪いスタッツとは言えないのかもしれない。ATP公式サイトが報じている。
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ナダルの2thサーブはベレッティーニより速い
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ナダルは今シーズンに入ってから、長年の彼の弱点であるセカンドサーブを改善するべく、確実性よりも威力を重視したサーブを打つ方針をとっているのは、画面越しにプレーを見ていてもよく分かる事だ。
特に、ナダルのセカンドサーブの変化は、大きくスタッツに現れている。前回出場したグランドスラムである昨年の全仏オープンでは、ナダルのセカンドサーブのスピード平均が150kmだったのに対して、全豪オープンのこれまでの試合では、なんと平均162km/hを叩き出している。セカンドサーブの平均スピードが二桁も変化するのは、とてもレアな事象だ。
ちなみに、このスタッツは、他のビッグサーバー達と比べても引けを取らない数字だ。今のナダルのセカンドサーブは、マッテオ・ベレッティーニ(161km/h)、ダニール・メドベデフ(156km/h)、ステファノス・チチパス(155km/h)よりも早いものとなっている。
ナダルのサーブについてコーチのモヤが解説
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選手のフィジカルが向上したことと、ラケットの進化により、サーブに求められる要素が、確実性よりも攻撃性にシフトしてきている現代テニスにおいて、ナダルが意図的にサーブスピードを上げているのは、正しい進化だと言えるだろう。彼のコーチであるカルロス・モヤは、ナダルのサーブについて以下のように語っている。
「サーブによるフリーポイントが増えていると実感している。マンナリノ戦の後で、ナダルとサーブについて話したんだ。あの試合で彼は、16本のエースと6本のダブルフォルトを出したよね。でもこれは決して悪いことじゃない」
「私は、ダブルフォルトが0本でエースが3本取れる試合運びよりも、今回のようにエースが16本取れるほうがずっといいと言ったんだ。なぜなら、最終的にはもっとポイントを短くして、攻撃的になることがナダルの目標だからね。そのためにサーブを強化することは必須だ」
「昨日(シャポバロフ戦)は、サーブの強化を明確に示した試合だった。あのスタッツは、ナダルがリスクとリターンの比率を計算し、受け入れているという意思表示なんだ。これまでのところ、その利益は非常に高い」
モヤの言う事は正しい。シャポバロフ戦では、11本ものダブルフォルトを出したが、それでもナダルはリスクを取り続けた。実際、圧倒的なオフェンス力を誇るシャポバロフを相手に、最初のサービスゲームから12ゲーム連続でブレイクポイントを与えなかった。スピードも申し分なく、ファーストサーブは平均190km、セカンドサーブは平均165kmと立派な数字だ。ちなみにナダルは、大会を通してキープ率も95%[78/82]と高水準である。
ナダルのサーブスタッツ一覧【2022年シーズン】
・サービスエースの数:52
・1thサーブの平均速度:188km/h
・2thサーブ平均速度:164km/h
・1thサーブのポイント獲得率:79%
・2thサーブのポイント獲得率:54%
テニスをプレーしている方なら理解できると思うが、サーブでリスクを負うのはとても大きなプレッシャーがかかるため難しい。下手したら相手のポイントに直結するのだから当たり前だ。しかしナダルは、リスクを負いつつも効果的にサービスゲームを展開している。果たして、次の準決勝の相手となるマッテオ・ベレッティーニ戦では、どのようなサーブを披露してくれるのだろうか?
(画像=rafaelnadal)