【ATP/テニス】ダビドビッチ・フォキナのコーチって一体誰?【暴れん坊の手綱を操る名将】

 

アレハンドロ・ダビドビッチ・フォキナは、ATPツアーで最も注目される選手の一人へと成長した。モンテカルロでは、自身初の決勝進出を果たし、ATPランキング27位という自己最高位にも到達している。

そんな彼のコーチであるホルヘ・アギーレは、幼少期からプロになるまでフォキナを指導してきた過去があり、彼を誰よりもよく理解している。そこで今回は、アギーレ本人が話したフォキナとの関係について紹介させていただきたい。ATP公式サイトが報じた。

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Q.モンテカルロでフォキナが準優勝するのを期待していましたか?

複雑なんだ。数ヶ月前から、アレックスはあらゆる面で調子が良さそうだとは思っていたんだよ。彼の姿勢、意思、献身性、レベル…。結果が出ないと、すべてが色あせて見えちゃうけど、2試合連続で勝ったりすると、すべてがうまくいったと感じる。

マラケシュであんな結果だったのに(初戦敗退)、次のモンテカルロであんな素晴らしい戦いができるなんて思ってもみなかったよ。でも、それがアレックスなんだ。私たちは、本当にうまくいくことを望んでいた。それから状況が整い、彼は素晴らしい1週間を過ごすことに成功したんだ。

伝説のプレイヤーを破った後、多くの選手はパフォーマンスを発揮するのに苦労するのが普通だ。だけどアレックスは、ジョコビッチを倒した後、その逆を行ったんだ。

私はアレックスのことをよく知っているし、彼の性格もよく分かっている。最近まで、彼のパフォーマンスは周りの期待に応えられず、低下していた。彼は期待に応えていなかったんだ。でも、ノバクのような選手を倒して内なる自信を感じたとき、『自分は誰とでも戦える、誰にでも勝てる』ということが分かったアレックスは、とても危険なプレーヤーになるんだ。

アレックスには、コートの中でも外でもパワフルだと感じ、もっとやりたいと思える力がある。心の底では、自分はいいプレーができるという自信があったはずだよ。

Q.成功を収めたフォキナの精神をマネジメントしてますか?

以前よりずっとよくなっていると思う。以前、高いレベルでピークを迎えたときに犯していたかもしれない小さなミスを認識できたんだ。昨シーズンからだけでなく、2019年以降、彼のレベルが急上昇する瞬間があった。そして、それを管理するのに苦労していた。

ここ数年、何度か我慢強く言い聞かせながら(笑)、チャートや分析を勉強してきたことが、彼にこの新たな状況を許容する助けになるはずさ。彼は、大きな興奮と力をもって、今の状況を楽しみにしていた。もっと戦いたい、またコートに立ちたい、と。

Q.フォキナとあなたの関係を教えてください

とても特別な関係だ。スポーツの世界がどのようなものなのかは、誰もが知るところだよね。プレイヤーは、連敗すると責任を追求しがちなんだ。コーチは、その意味合いや、個人的な面とプロフェッショナルな面を両立させるための取り組みに苦慮することもある。

私たちの場合は、私のスポーツ的な野心もあって、両者が一体となった面がある。私は長年、選手を育成し、世界のエリートの仲間入りをすることに情熱を傾けてきた。アレックスを指導し始めたとき、その可能性が見えてきたんだよ。私は、彼をできるだけ助けようと、全身全霊で戦っている。

アレックスには、自信と忠誠心と、自分が思う最高のハンドに委ねられているという確信がある。スランプを乗り越えようとするとき、彼は他を見ずにそれを実行するんだ。彼は、自分がどこでミスをしたのか、あるいは私たち全員がどこでミスをするのかを知りながら、誰のせいにもせず、内側に目を向けている。

私たちは、長続きする人間関係と同じように、テーブルの上に物を置いて、私たち全員の関係を成長させたいと思っている。それが重要なんだ。お互いが相手の勝利を願う。それが、互いに刺激し合える大きな力になる。

Q.フォキナは試合に没頭するタイプですよね?

僕にとって、言葉に表すとそれは変化なんだ。アレックスは火山のような性格だから、一緒に仕事をするのは簡単じゃない。感情の奔流なんだ。コート上で興奮しすぎてしまうから、私が冷静でいる姿を見せなければならないこともある。もし私が興奮しすぎたら、納まりがつかなくなるかもね。

また、彼が信念を欠いていたり、ステップアップする必要があると感じたときに、私の意見を伝えられるということは、彼にとってもいいことだと思う。ゲームが彼に何を要求しているかを読み取って、それに従って行動しているんだ。

Q.フォキナの持ち味は何ですか?

22歳の大人が、我々に対して忠誠心と誠実さをもって接している姿は、本当にすばらしいと思う。僕に対しても、心理学者に対しても、フィットネストレーナーに対しても…。彼は、身近な人にとても献身的なんだ。友達とも仲良しで、愛情を求めている。あまり表には出さないんだけどね。

彼は自分の夢のために戦おうとしている。小さい頃からテニスで輝かしい成績を残している。彼は、偉大なプレーヤーになるために、そして、人々が彼の素晴らしさを知ることができるように、自分の性格と格闘しているんだ。

Q.フォキナが改善すべき点は何ですか?

良い面も悪い面も含めて、あらゆる面で改善の余地があるのが普通だよ。彼の長所の中で際立っているものはない。彼が試合、特定の1点に全エネルギーを集中させることができたとき、やっと多くのことができるようになる。ベースラインからのプレー、フォアハンド、バックハンド、サーブ、リターン、動き、ディフェンスから攻撃への移行、激しい攻撃…。

調子が悪いときは、すべてが悪いように見える。突出した強みがないから、大事な場面でサーブやフォアハンドに頼ればいいというわけにもいかない。そこが改善の余地さ。何事にもパーセンテージの差はある。

練習を重ねて、時間がもう少し経てば、サーブがうまくなり、フォアハンドもますます安定し、ショットはよりクリーンになるはずだ。バックハンドの高さをより良く変え、クレーコートとハードコートの両方でベースラインをより滑らかに移動し、ネットプレーを改善する。より完璧なプレーヤーになるためには、すべての要素を少しずつ取り入れることが必要なんだ。

Q.フォキナと彼のメンタルコーチについて教えてください

チームには、心理学者であると同時に私の親友でもあるアントニオ(・デ・ディオス)が常にいる。アントニオは、アレックスが11歳のときから一緒に仕事をしているんだ。私たちはずっと一緒に仕事をしてきた。私も心理学は勉強したよ。スポーツの中でとても好きな分野なんだ。だけど、私は悪い心理学者で、アントニオは良い心理学者さ。

というのも、テクニックは基本だけど、ショットの前に頭の中で起こることが、体をボールに追随させたり、後ろに下がったり、より窮屈にさせたりするんだ。アレックスはそれをよく知っているし、だからこそいつもアントニオを頼りにしている。

Q.アルカラスとフォキナはライバル関係にありますか?

間違いない。前から見てもそうだった。数年前はアレックスが台頭してきたように見えたけど、今はカルロスが登場し、成層圏の選手になっている。これは我々にとって素晴らしいことだと確信しているよ。22歳で、いいプレーをしているにも関わらず、突然18歳の子供がやってきて、自分を追い越して行くんだから。

年齢が重要ではないということを、彼が理解しているのはとてもいいことだ。それは、瞬間や可能性、そして自分が望むもののために戦うということだからね。彼らはお互いを助け合ってるんだ。2人は良き友人だし、偉大なテニスプレイヤーだからね。

Q.今後のフォキナの目標は何ですか?

回復させるために、3日ほど休養を取った。今週の水曜日からは、エストリルに向けたトレーニングを開始する予定だ。週末にはポルトガルに行くよ。

正直なところ、この10日間、彼に言ってきたことは変わらない。私たちチームが望んでいるのは、アレックスがもっとコンスタントに自分の正しいゲームを見つけられるようになること。コートに出るたびに自分を認識し、あのレベルでプレーできると確信してほしい。自分はこういう風に動ける、こういうサーブを打てる、と自分に言い聞かせてね。

どんな結果でも、彼に課題はつきものだ。だけど、1ヵ月半後には、彼が自分自身を認められるレベルにしたい。それが目標さ。

私たちが望むのは、アレックスが試合やトレーニングのためにコートへ出るたびに、最高の興奮と献身をもってそれを行うことだ。それがウィンブルドンであれ、全仏オープンであれ、エキシビションマッチであれ関係なくね。一日も早く、それを実現できることを願っている。

(画像=https://twitter.com/alexdavidovich1/status/1515740406855741449)