【全豪オープン】バーティの強さの秘訣は現代テニスの失われた芸術であるスライス。【決勝展望】

 

アシュレイ・バーティは、大坂なおみやカイア・カネピのようにフォアハンドを強く打つことはしない。また、マディソン・キーズのようなサービスボムを繰り出すこともない。だからと言って、シモナ・ハレプやココ・ガウフのような俊敏性も持ち合わせていない。では、なぜ彼女は世界女王として君臨しているのだろうか?WTA公式サイトが報じている。

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ペグラ「バーティのプレーにはイライラする」

 
 
 
 
 
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全豪オープンの準々決勝で、バーティに2-6,0-6のスコアで敗れたジェシカ・ペグラは、試合後に「彼女はすべてをうまくこなしているの。正直なところ、誰よりも上手にね」と悔しさを滲ませた。

ペグラは決して二流の選手ではない。彼女の父親は、アメリカでも有数の投資家であり、ペグラはテニスをプレーしなくても食べていけるはずなのだが、彼女が努力を怠ることはなかった。2年連続で全豪オープンの準々決勝に進出したのがその証拠だと言えるだろう。しかし、そんなハードワーカーなペグラも、バーティ相手には、わずか2ゲームしか取ることが出来なかった。

「無力感を感じた。バーティがこれまでに、どれだけの強さを見せてきたのかはみんな知っていると思うけど、残念ながら、私もその犠牲になった。彼女のプレーは細かい所が上手くて、本当にイライラする」

バーティの強さの秘訣は、ペグラが発言した通り、女子ツアーでは失われつつあった細かなテクニックをマスターしていることだ。

オフシーズンにサーブを強化し、スライスバックハンドに磨きをかけ、コーチであるクレイグ・タイザーと一緒に綿密な戦略を練るなど、バーティのテニスに向けた熱心なアプローチには目を見張るものがある。

166cmしかないバーティの驚異的なサービススタッツ

 
 
 
 
 
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バーティが初めてグランドスラムの4回戦に進出したのは、2018年の全米オープンで、初めて本戦に出場してから17回目のことだった。それ以降、彼女は5回の準々決勝、3回の準決勝に進み、2019年のローラン・ギャロスと昨年のウィンブルドンで2つのタイトルを獲得した。

バーティは決して天才ではない。彼女はこれまでにゆっくりと、着実に進化を続けてきているのだ。その証拠として、バーティは全豪オープンの会見で以下のようにコメントしていたことがある。

「1試合1試合、私は学ぶ。すべての経験は、それが良いものであれ、悪いものであれ、無関心なものであれ、私は学ぶの。すべての経験から学びを得ることができなければいけない」

その学びのおかげか、今シーズンが始まってから、バーティは信じられないクオリティのサービスゲームを展開している。シーズン初戦となったアデレードでのタイトル獲得時から、全豪オープンの4回戦まで、63回連続でサービスキープをしていたのだから驚きだ。

もちろんバーティは、サービスのスタッツも優秀だ。全豪オープンでこなした6試合を通じて、バーティはファーストサーブのポイント獲得率が83%(137/166)と現在ツアーのトップであり、セカンドサーブのポイント獲得率も59%(115/68)と完璧なスタッツを残している。しかし、忘れてはいけないのが、彼女の身長が166cmしかないことだ。

世界ランキングトップ5の選手の中で(アリナ・サバレンカ、ガルビニェ・ムグルサ、バーボラ・クレイチコバ、カロリーナ・プリスコバ)バーティは、他の4選手の平均身長と比べると15cmほど小さい。これは周知の事実だが、身長が低いことは決してサーブにプラスにはならない。

例えば、全豪での最速サーブを打った大坂なおみが記録したアベレージは、196kmを軽く超えているが、バーティの最速サーブはそれより12kmほど遅く、ツアーのトップ20にも入れてない速度だ。これは、バーティが足りないフィジカルを、どれだけ高度なテクニックで補っているのかが、よく分かるデータだと言えるだろう。バーティは過去に、自分のサービスゲームについて、以下のように語ったことがある。

「私は世界で一番大きい選手じゃないけど、しっかりとした技術を持っているし、リズムをとって効果的にサーブを打つことができれば、武器になると考えているの。テニスのショットの中で、自分でコントロールできるのはサーブだけ。できるだけ高頻度で、自分のペースから(ポイントを)スタートさせることが大切なの」

バーティのスライスはフェデラーのように美しい

 
 
 
 
 
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バーティが武器としているのは、決してサーブだけではない。バーティとペグラの試合中、4度のグランドスラムチャンピオンであり、現在は解説者として活躍するジム・クーリエが、バーティのスライスバックハンドを、ロジャー・フェデラーと比較したことが話題となった。それだけ彼女のスライスは美しく、効果的だったのだ。バーティは試合後の会見で、このクーリエの比較について謙遜した。

「私のバックハンドは、フェデラーのクオリティには程遠いよ。でも、いろいろなスライスの使い方を知っていて、ラリーの選択肢が多いということは、ここ数年のキャリアの中で、大きな武器になっているのは間違いないね」

バーティのスライスの威力は絶大であり、彼女と準決勝を戦ったマディソン・キーズは、彼女のスライスの凄さについて以下のように解説している。

「彼女は、どんなビッグショットが来ても、しっかりとスライスを打つことができる。つまり、彼女はラリー中に劣勢になっても、すぐにリセットして、ニュートラルに戻すことができるの。しかも、彼女のスライスはとても低い位置に来るから、対応が難しい」

バーティは全豪オープンを優勝できるのか?

 
 
 
 
 
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バーティがテニスにおいて取り組んでいるのは、相手が嫌がること、つまり弱点を徹底的に突いて、相手から自信を奪い取ることだ。

「もし、自分が相手のショットやパターンに苦しんでいるなら、まず、そのパターンから抜け出す方法を考えるけど、ただ打ち返すだけじゃダメ。必ず、相手にダメージを与える方法を見つけ出すんだ」

「私が全力を尽くしているのを、みんなが理解してくれるように願うばかりだよ。正しい方法で、正しいことをして、自分に最高のチャンスを与えようとする、私はそれしかできないからね」

全豪オープンのここまでの6試合で、わずか20ゲームしか落としていないバーティは、圧倒的な支配力を見せている。決勝の相手は、屈強なパワーヒッターであるダニエル・コリンズだが、バーティは彼女をどうやって料理するつもりなのだろうか?

(画像=ashbarty)