テニスプレーヤーとファンがUSオープンに向けて動き出す中、ニック・キリオスは大きな存在感を発揮している。モントリオールでは現在世界ランキング1位に君臨するダニール・メドベデフを倒し、観客を熱中させた。では、彼はなぜここまで強いのか?今回は、Tennis.comに寄稿されていた記事を元に、深く掘り下げて行きたい。
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試合に対する態度の向上
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世界中のジュニア・コーチは、キリオスの活躍に対して頭を抱えていることだろう。このスポーツで悪童と呼ばれている彼が勝てば勝つほど、生徒たちから股抜きサーブを打つ方法を教えてほしいと懇願されたり、ミスショットのたびに友人や家族に向けて大声を出して怒ってもいいのか尋ねられることになるからだ。
キリオスのコート上での振る舞いが、子供たちのお手本になる可能性は低い。しかし、27歳となった彼はキャリアの脚本を書き直し始めている。キリオスの今年の成績は28勝7敗で、過去6大会のうち5大会で準決勝以上に進出し、自身初のグランドスラム決勝進出も果たした。無気力試合が目立った若き頃の彼の姿はどこにも見えないのだ。
勝つためのフィジカル作り
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現在と2022年以前のキリオスを比べてみると、大きく変化していることが分かる。今シーズンが始まってから、彼はまるで別人のように軽く、引き締まり、健康的になった。テニスの上達は、フィジカルの向上から始まる。良いボールを打つには、まず良いポジションをとらなければならないからだ。
現代テニスで勝ち残るには、できるだけ多くのフォアハンドを打つために、バックサイドのボールに回り込める走力を身につけることも必要だ。つまり、爆発的な動きを何度も何度も繰り返す持久力がいる。キリオスはツアー内で最も強烈な威力を持つフォアハンドを持っているため、フィジカルが向上したことで以前よりも頻繁に自慢の武器を使えるようになった。これは恐ろしい進化だと言える。
無駄なトリックショット
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キリオスは、トリックショットのコンセプトを極限まで高めている。試合の最も重要なポイントでさえ、彼は股抜きのパッシングショットを試みたり、シンプルなフォアハンドで十分にエースが取れる時に、わざわざドロップショットを打つ。このようなプレーが裏目に出る度に、解説者たちが「なぜだ」と首をかしげることもしばしばだ。
しかし、これらは決して全てが無駄なショットだとは言い切れない。この狂気とも取れるショットセレクトにはメリットもあるのだ。
もし、あなたがキリオスと対戦することになれば、彼の持つカードの多さに困惑することだろう。なぜなら、急にドロップショットが来るかもしれないし、フォアでスライスを打ってくるかもしれない。そしたら、次のドライブショットはあなたのリズムを完璧に崩すだろう。サーブも同じだ。もし、あなたがキリオスの不意打ちのアンダーサーブを防ぐために、ベースラインの近くに立つ選択をすれば、彼のフラットサーブに反応する時間は奪われてしまう。
一つ一つのショットレンジでは無駄に見えるトリックショットも、長い目で見てみると効果的である場合がある。これはキリオスのテニスが持つ特有の持ち味だ。
絶対にビビらないメンタル
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キリオスは、格上の相手に向かってハードに戦うことを苦にしたことがない。ラファエル・ナダルやノバク・ジョコビッチと対戦する時の彼は、常に全力を尽くし決してミスショットを恥じることがない。しかし逆に、キリオスは格下や実力の劣る相手、つまり本来倒すべき相手に対して、全力投球の姿勢を貫くことに苦労してきた。
格下の相手と対峙するのは、誰にとっても心理的に辛いものだ。相手には得るものがあるのに、自分には失うものがあるからだ。しかし、そういった試合こそ、最高のプレーヤーが勝つべき試合であり、勝つことで実力を証明することができる。そして今シーズンのキリオスは、勝つべき試合で勝利し、結果を残している。
このような状況に最も頻繁に遭遇する選手、テニス界のBIG3たちを想像してみよう。ナダル、ジョコビッチ、フェデラーは、対戦相手を区別することは決してない。同じ練習スケジュール、同じ試合前とポイント間のルーティーン、普段と変わらない試合中の態度など、どんな試合でもまったく同じように挑むのだ。
ツアーでは誰にでも負ける可能性があり、もし負けたとしても恥じることはない。このメンタリティを持つことが、敗戦を少なくしている大きな理由でもある。そして、キリオスは同じことができる才能を持っているのだ。もし、キリオスがウィンブルドン決勝でジョコビッチに見せつけたようなプレーを、毎週のように実現することができれば、彼が勝つことはもっと多くなるだろう。
ストレスの発散方法
@NickKyrgios asks fan where he should serve match point! @CitiOpen #CitiOpen @atptour pic.twitter.com/vl1rNpfS6C
— Eric Azares (@ericazares) August 3, 2022
キリオスのトレードマークの一つとして、声を使ったフラストレーションの発散が挙げられる。逆境に立たされたとき、彼は他のどの選手よりも声を荒げて不満をあらわにする。
テニスにおいて、ストレス発散の方法を持っている選手は有利だ。悔しさを溜め込んでしまうと、自由なプレーができなくなったり、過去のミスを考え続けてしまったりする。吐き出すのはいいことだ。
キリオスが問題を起こす時は、彼がフラストレーションを上手に発散出来ない時に起こる。自分のチームや審判長、スタンドにいた女性客に「700杯も飲んだ酔っ払いだ」と不満を爆発させるのだ。
(画像=https://www.instagram.com/k1ngkyrg1os/)