今シーズンは、カルロス・アルカラスとオンス・ジャバーの活躍により、新たな戦術としてドロップショットにスポットライトが当り始めたが、どうやら芝シーズンに移ったことでかなり興味深いスタッツが出てきたようだ。BASELINEが報じている。
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ドロップを進化させたアルカラス
Much better for Alcaraz!
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Carlitos claims 3rd round ticket with 2 hours less on court than in previous match dominating Tallon Griekspoor 6-4 7-6 6-3 pic.twitter.com/S9I4bhXcyo
本来、ドロップショットは”パニック・ショット(奇策)”のポジションに置かれるものであり、パワーテニスの時代を迎えた現代において、次第にその有効性は失われたかのように思われていた。キャリア初期のフェデラーがフォアのドロップを嫌っていた話は有名だが、戦術に組み込もうと考えるプレイヤーはかなり少なかった。
しかし、アルカラスとジャバーという2人のゲームチェンジャーが現れた。彼らが使うとドロップショットは究極のラリー妨害手段となり、クレーシーズンで大混乱を引き起こした。アルカラスはバルセロナとマドリードで連覇を達成し、全仏オープンでは準々決勝に進出、ジャバーはチャールストンとローマで決勝に進み、マドリードでトロフィーを手にした。
アルカラスはドロップを打つ本数が減少している?
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Speed, determination, precision – what a get, what a point!#Wimbledon pic.twitter.com/y1CXP7gnjV
ナチュラルなサーフェスであるクレーと芝では、イレギュラーバウンドのおかげで、ドロップショットがより効果的になる。しかし、プロを含むほとんどのプレーヤーは、芝よりもクレーでドロップを打ちたいと考える人が多いはずだ。
理由は簡単で、通常プレイヤーはクレーで戦う場合、ベースラインの後ろに立ち、コートの後ろからポイントを凌ぐのがオーソドックスな戦い方であるため、ドロップショットはリズムを崩し、相手の気を引くための賢い方法と言えるためだ。
しかし、本来は芝のコートの方が、ドロップショットは有効と捉えることもできる。芝のコートは低くて速いバウンドを描くため、ドロップショットでも美しい弾道を作ることができる。特にウィンブルドン序盤のスリッピーで生い茂っている芝の上では、足を滑らせる選手も多いため、効果的な戦術である事は間違いない。
だが、アルカラスの放つドロップショットの本数は、ウィンブルドンでは減少傾向にある。彼は初戦のストルフ戦で73本、ラモス・ビノラス戦で74本と、ほぼ同じ数のウィナーを放ったが、ポイントの組み立て方は全く違っていた。
対戦相手 | VSストルフ | VSラモス・ビノラス |
ボレー | 39回 | 7回 |
ドロップショット | 4回 | 11回 |
対戦相手のストルフが114回もネットに出た影響があったとはいえ、アルカラスはウィンブルドンの初戦でドロップショットを4回しか打たなかった。これは面白いスタッツだと言えるだろう。
減少した理由を考察してみると、やはりポジショニングの問題が大きいと思われる。展開の早い芝コートでは、リターンを除けばベースライン付近にポジションを取る選手がほとんどだ。スペースのギャップを作り出せないのは、ドロップショットの効果を相殺させる要素と思われる。
アルカラスのウィンブルドンはまだ始まったばかりだが、今後どのようなプレーを見せてくれるのだろうか?彼のドロップの本数に注目してみると、より面白く観戦できるかもしれない。
(画像=https://twitter.com/carlosalcaraz)