ジョコビッチが作ったPTPAはどうなってしまうのか?【多分、崩壊する】

 

ノバク・ジョコビッチとバセク・ポスピシルが、2020年9月に設立した新興の組合組織であるPTPAだが、実際のところどのような活動を行ない、今後はどういった道を歩んでいくのだろうか?海外サイトtennis.comが報じている。

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ジョコが作ったPTPAは影が薄くなっている

 
 
 
 
 
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結論から話してしまえば、PTPAはこれまでのところ、男子ツアーのビジネスのやり方に大きな影響を与えられていない。「選手の意見をより反映し、下位ランクの選手に充分な賞金を渡らせる」と言う方針に変わりはないはずだが、年々存在感が薄まっていることは事実だ。昨年の春、アレクサンダー・ブブリクはPTPAについて、以下のように答えたことがある。

「今のところ、(PTPAは)基本的に口先だけだよ。実際には何も変化は起きていない」

しかし、だからといって、PTPAが掲げている目標に、全く意味がないわけではない。何故なら、テニスというスポーツは貧富の格差がとても大きいからだ。年間20億ドル以上の収益を上げる人気スポーツでありながら、ツアーでまともに生計を立てられているのは上位100人程度だと言われている。

30年前に現在のATPの運営体制を構築した一人であるボブ・グリーン氏は、昨年のスポーツ・ビジネス・ジャーナルの記事で「このシステムは本来、トーナメントのオーナーが操作するものではなく、選手が運営するものだ」と発言している。つまり、ATPは、今の運営体制を作った始祖と言える人たちが本来考えていたものとは、全く違うベクトルに進んでいることは確かなのだ。

ジョコが率いるPTPAはメンバー勧誘が必須

 
 
 
 
 
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今後、PTPAが活動を活発化させるためには、有力なメンバーを取り入れる必要があるだろう。しかし、ラファエル・ナダル、ロジャー・フェデラー、アンディ・マレーはいずれも加盟を辞退している。そこで重要になってくるのは、若手スター達への勧誘だ。

PTPAはダニール・メドベデフ、アレクサンダー・ズベレフ、ステファノス・チチパスといった選手達を説得していくはずだ。3人はいずれも非協力的、あるいは関心がないと言われているが、彼らのうちの誰かが加入すれば、PTPAの組織としての力は大きくなると思われる。

しかし、新年を迎えた今、新たな疑問が生まれている。ジョコビッチがオーストラリアで起こした騒動は、彼の信頼性を損なった。若手選手の勧誘やツアーとの駆け引きに、間違いなく影響を与えるだろう。ジョコビッチのワクチン接種の状態が今後も問題となり、世界的な批判を受け続けるのかによって、PTPAの存続にも大きく関わってくる。

ATPが掲げている30年計画を知っている?

 
 
 
 
 
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現在ATPは “30年計画 “を推し進めている。2021年にATPのCEOであるアンドレア・ガウデンツィが打ち出したこの計画は、現在開催されているマスターズ1000クラスの大会に30年間の延長ライセンスを与え、すべてをグランドスラムと同じ規模である2週間の大会にし、純収入益を選手とトーナメントで50対50で分配することを約束する、と言うものだ。

一見すると、この判断はテニス界を繁栄させる素晴らしい計画にも見えるが、ガウデンツィが「チャレンジャーツアーは大学のようなものだ。費用は選手が負担するべき」と発言して炎上したように、ツアーに蔓延っている貧富の差をさらに拡大させる可能性を持つプランでもある。

この30年計画は、PTPAの解決すべき最大の問題だ。しかしファンの目線がチャレンジャーツアーに向いていないことは事実であり、PTPAの概念をファンに浸透させることができるのかも、重要な課題となっている。

PTPAがやるべき仕事はプランの提示

 
 
 
 
 
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PTPAの活動は、困難なものになるだろう。ファンにとっては、マスターズ大会が2週間に拡張され、コンテンツとしてリッチになる方が魅力的と言えるし、下位ランクの選手へお金を回したいと考えているPTPAの活動は、もしかしたらテニス人気を妨げるものになるかもしれないからだ。

ここまでの話を聞いて、下位選手を見捨てるような真似をしているATPの30年計画が、本当に正しい路線を辿っているのか疑問を浮かべる人もいるかもしれないが、このプランはテニス界の繁栄に間違いなく繋がると言える。何故なら、ATPはファンを獲得する方法を深く熟知しているからだ。

1970年代初頭、プロツアーが結成され、世界中の都市でトーナメントが開催し、テニスがメジャーなスポーツへ昇華してから、ATPはトッププレーヤーの対戦回数を増やすプラットフォームを作ることに尽力してきた。結果的にその目的は見事に達成され、このツアー運営団体はBIG3時代と言うダイナスティを作り上げることに成功しているのだ。ATPへのファンからの信頼は、地道に作り上げてきた強固なものである。

果たしてPTPAは、ファンにATPが行なってきた活動と同じようなメリットを提供できるのだろうか?PTPAが今やるべき仕事は、ツアー仲間たちとファン達へ、ATPよりも魅力的なプランを提示することだ。

(画像=djokernole)